ちょっと前のことですが、1月24日に東京・浜松町の「四季劇場 秋」で、劇団四季のミュージカル「ノートルダムの鐘」を観てきました。
あぁ、やっとこのミュージカルのことが書ける。
なかなか今まで書けなかったのは、忙しかったためもあるのですが、とても内容が濃いミュージカルなので自分の中でまとめるのに時間がかかったというのが正直な所です。
※ネタバレ的なことも書きますので、気になる方は読まなくても良いのですが、実際に観るのと文字で読むのとでは大きな違いがあるので、そんなに神経質にならなくても良いのでは…?と思います。
劇団四季のサウンドトラック、おススメ!
右が今回公演のプログラム、左が劇団四季版のサウンドトラックCD。
このCD、ライブ録音(編集あり)なので熱気も感じられて、変にきれい過ぎずおススメです。
ストーリーなどは、こちらのページをご覧ください。
演劇的で、想像力を刺激される素晴らしい演出
私、この作品大好きでして。1996年のアニメも何度も観たのですが、早く舞台化されないか、そして劇団四季がやらないかと首を長くして待っていました。
そして、待ちに待った上演決定!素晴らしかったです!待った甲斐がありました。このミュージカルは、劇団四季の代表作になるのではないかと、私は思います。絶対万人受けしないと思うのですが(^^; よく上演決めましたね、四季さん。
まず凄かったのが、演出。
舞台は大聖堂の中を思い起こさせる装置で、舞台奥に聖歌隊がいます(これが相乗効果をもたらして、素晴らしかった!)
基本的に大きな場面転換はなく、ミサの会衆が柵や椅子、梯子などを様々に動かしながら場面を説明していき、そして自分たちも登場人物に扮して物語を進めていくというやり方でした。「ライオンキング」とか「アラジン」のように派手な装置がないため、集中して観ていないと分かりづらいところもあります。
ただ、逆に想像力をすごく刺激されて、ストレートプレイ(台詞劇)に近いような演劇の醍醐味が味わえるミュージカルでした。最近、こういう濃い演出の作品を観ていなかったので、私はとても好みでした。
特に、最初のシーンで会衆の一人が、カジモドに「なる」場面はシビれました。特殊メイクをするのかと思っていたのですが、舞台奥から一人の普通の男性が歩いてきて自分の顔に黒い線を入れます。そして背中にクッションを背負い、その上から服を着て振り返ると、その姿はまさにアニメで見たカジモドそのもの。これだけでもスゴイと思ったのですが、この場面で流れた歌が「人間と怪物 どこに違いがあるのだろう」という歌詞。
この演出は幕切れでも見られ、そちらではカジモドが普通の顔になり、それ以外の登場人物が顔に黒い線を入れています。
「醜さとは何なのか」ということを考えさせられる演出でした。
音楽~アントラクトにグッときました
そして絶対に触れなければならないのが、音楽!
アラン・メンケン凄い!
ノートルダムの音楽って、他のミュージカル(美女と野獣とか、リトルマーメイドとか)と比べても重厚で、ちょっとしたオペラや宗教音楽の雰囲気も持っています。それが、この大聖堂を模した装置と聖歌隊のおかげで一層重厚になり、迫力が出ました。
私が一番好きなのは、あまり本編のストーリーとは関係ないのですが、ラテン語で歌われる「アントラクト~間奏曲」
先日このアントラクト後半のラテン語を四苦八苦しながら訳してみたのですが、「いつか幸せで輝かしい日が訪れることを私たちは信じている。唯一の生きる望みがなくなってしまう日まで、決してあきらめない。必ず変わる時がくる」という内容のことを歌っていました。(意訳です。もし全く違うよ~というご意見ありましたら教えてください。)
「幸せで輝かしい日」というのは物語の内容から考えると「差別や偏見がなくなってみんなが幸せに暮らせる日」という意味だと思います。この作品のテーマに関することなのですが、それがラテン語で教会音楽風に歌われるというのも「祈り」が感じられて素晴らしいと思います。
フロローの恐ろしさと悲しさ。
役者さんたちも素晴らしかった!
主役級の方から、アンサンブル、そして聖歌隊まで実力派揃い。一人ひとりがしっかりしているので、全員の歌になった時の迫力が凄いこと!これは、劇団四季の層の厚さによるものだと思います。
特にフロローの芝さん、良かったです。
アニメのフロローは「根っからの悪人」という感じですが、芝さんのフロローは特にカジモドに対して優しさがあり、元々は真面目で良い人であるだろうことが想像できました。でもその分エスメラルダに心惹かれてから壊れていく様が悲しく、また恐ろしくて気持ち悪かった(とても褒めてます)
フロローは自らの正義に凝り固まってしまい、法律を曲げ、幼い頃に自分を守り育ててくれたはずのノートルダムに襲撃をしかけ、聖域を犯してしまいます。
信仰のおかげでフロローは真面目に生きることができたのに、その信仰を盾に自分を正当化してしまったために、結局自らを滅ぼしてしまう…なんとも哀れですが、ちょっと歯車が食い違うと誰でもその可能性があるのかもしれないと思いました。
真の主役は「民衆」なのでは?
それからポイントとなるのが、民衆の心変わりなのかなと思います。
道化の祭の日にカジモドを苛めたのは民衆。
その民衆が、エスメラルダの処刑を面白がって見物したと思ったら、フィーバスの働きかけに感化されてフロローのノートルダム襲撃を阻止しようとしたり、エスメラルダの亡骸を前にして自分の顔に醜さの象徴のメイクをしたり…。
現代でもそうなのですが、人の心は気まぐれで、とても流されやすいものなのだというのが分かります。
どこか「ジーザス=クライスト=スーパースター」や「レ・ミゼラブル」に繋がるところも感じられるように思います。
実は、民衆こそが真の主人公なのでは?とも思えます。
その他のキャストの皆さんもブラボー!
私が見た日は、カジモドが海宝さん、フロローが芝さん、エスメラルダが岡村さんでしたが、他のキャストの方が演じるとまた違った見え方があるようにも思います。
かなり後味が重いので、何度も繰り返して観るのはちょっと辛くなりそうですが、それでも後を引くミュージカルです。
ちょっとだけ要望を…。
とても素晴らしいと思うのですが、何点か不満もありまして…
1、所々訳詩が気になる所が…
ちょっと歌詞がメロディーに乗っていない所があったりします。
あと「僕は彼女のために大事な仕事を捨てた」という歌詞は、ちょっと意味が違うと思うのですが…。
2、できれば生オケで観たい!
難しいと思うのですが、これで生オケだったら迫力も倍増して素晴らしくなるのになぁ~。
これからも繰り返し上演していただきたいと思いますし、私も繰り返し観たいミュージカルでした。